心に残っている出来事は実に多いが、アジア女性基金の終了にあたり、特に望みたいことをここに付記したい。償い事業の成功・不成功は、限られた時限でのアジア女性基金の事業のみで測るべきでは無いと考える。基金は、連立政権下での与党3党が合意し、それなりの予算を国会が承認し出費してきたにも拘わらず、政府は国内においても、国際的な場においても償い事業の明確な説明をしていない。その根本的な理由として挙げられることは、戦後処理に関する議論を発展させず、国としての理解や立場を整理してこなかったことによる国家としての合意の欠如である。戦争に関する個々の意見の違いはあろうが、国家としての基本線を明確にすることなくして国民的な運動は出来ないのである。リーダーシップとは、国を纏める役割を担うことであり、国を二分することではない。償い事業が世論を動かすまでにいたらなかったことの主な原因はここにあると思う。と同時にこの状態は日本が国際的にも、アジアの中でも孤立する原因であろう。政治が「未来のためにある」のであれば、基金の事業から教訓を学んで頂き、日本の未来の役に立てていただきたいと望むものである。
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